昨日、2か月ぶりに仕事仲間の女子四人の食事会。
はほぼ毎日、一緒の職場で顔を合わせ、仕事が終われば、あれこれ話をしていたメンバーとやっと会しました。
全員、今回のコロナ禍で仕事をなくした旅行業に携わるミドル世代です。
その中の一人、60代女子が7月から別の職に就くことになりました。
長年、旅行会社で渡航手続きやツアーデスクを卒なくこなし、対客電話では、聞いていて惚れ惚れするような応対をしてきた彼女。
そんな彼女の新しい仕事はパン屋。新規オープンする店舗でアルバイトからのスタートです。
OJT期間が過ぎて上手くいけば、もう旅行業には戻らないだろうと。
同じチームで仕事したことが糧になったと、ありがとうございましたと笑って頭を下げました。
彼女が私に感謝していると言ってくれたこと。
それは、”仕事のスキルって何だろう”と煩悶する私が忘れていた基本的なことでした。
これは、60代でまったくの異業種へのスライドを決めた彼女が、さらさらと話してくれた就活話し、50代の自分が忘れてたことに気づいた話です。
*私の仕事についてはこちらから
sai-no-chii-kura.hatenablog.com
- ・【3月31日】私、今日で休業に入ります
- ・【4月7日】まだ、バイト決まりません
- ・【5月29日】最終審査で拾ってもらえました、次、最終面接です
- ・パン屋の担当者が60代の彼女に求めたこと
- ・60代の彼女がパン屋に売ったもの・彼女のスキル
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・【3月31日】私、今日で休業に入ります
そう彼女からLINEが来た時、私は彼女とは別の課の仕事に入っていて、終了したことを知りませんでした。実は彼女が持っていたツアーはすでに中止が決定し、月末でリリースされるとのこと。
「XXさんの仕事が確定したら、オペレーターでまた引き抜きお願いします!」
「もちろん! 次、契約確定したら絶対呼ぶからね」
内勤荷物を持って、私の席に丁寧に挨拶に来た彼女。
年上でオフの時は友達口調なのに、きっちり敬語で話す彼女の挨拶が、何故か妙に改まって見えて、
「また、ツアー決まったら、その時は絶対に来てね、来てね」と繰り返しました。
・【4月7日】まだ、バイト決まりません
「皆さん、お元気ですか? あれから1週間、まだバイト決まりません」
仕事をなくした彼女は、直近は補償があるとはいえ、バイト探しを始めました。
でも、あちこち応募するも、どこも連戦連敗、面接にも漕ぎ着けない。
彼女:
「今、バイトは学生さんがたくさんいるみたい、完敗です」
「XXさんのツアー催行の行方、どうでしょうか?」
私:
「4月2週目までには回答出そう、でもゴメン9割ないと思って覚悟してる」
彼女:
「そうですか、旅行の仕事復活は、経済で一番最後でしょうね.。。」
なんとか6月1か月間だけの短期バイトが決まり、その後も仕事探しを続けたそうで、7月新規オープンするパン屋のアルバイトにエントリー。面接をすることになったそうです。6月末で終わるバイトの続き、でも条件は長期。
旅行業の復活を待つ彼女の中では、長期は踏み切れない条件でした。
・【5月29日】最終審査で拾ってもらえました、次、最終面接です
面接と書類選考が通り、最終審査も通過したと連絡がきました。当初、「行ったほうがいいかな」というニュアンスだったのが、審査が通り嬉しそうなトーン。今までと全然違う職種なのに、それでも「何かしら」仕事ができることが嬉しいのだろうと思っていました。
そして、翌週月曜日、6月1日、「採用決定」したとの報告。
報告のLINEの文字は、本当に嬉しそうな絵文字とスタンプが並んでいる。仕事が繋がって良かったと私も安堵。でも、彼女はその時すでに、旅行業を離れて、第二の人生をイメージしていたようです。
・パン屋の担当者が60代の彼女に求めたこと
ここからの話は、昨日の食事会で聞かされた話です。
実は、彼女が就職することになったパン屋は、すでに7店舗展開している規模あるパン屋で、最終面接は本店の採用担当者と役員との口頭面談でした。
そこで聞かれたことは、
「例えば、レジが並んでお客様が文句を言ったら、どうしますか?」
「例えば、買ったパンにクレームを言ってきた方がいたら、どうしますか?」
彼女の答えは、
「不愉快な思いをしてらっしゃれば、お気持ちに沿ってお声がけをする」
「ご不満があれば、まずはお客様のお話を伺う。
そしてそのうえで、非があれば、真摯に謝罪する。
誤解があれば、納得いただけるよう説明させていただく」
ということでした。
そして、彼女は面接官に、こう言ったそうです。
「大型団体のツアーでは、みんなに等しくありたいけど、そうできないこともあるし、お待ちいただくことも、ご希望に添えないこともたくさんあります。お客様も、いろんなタイプの方がいらっしゃいます。
何百人、何千人をさばくにはマニュアルとルールが必要です。が、そのマニュアルとルールだけで接客しては、お客様一人ひとりに対応することにはなりません。」
「私は20代の人のようにきびきびとは動けません。でも私にしかできない場面で仕事をしたいと思います。」
彼女の言葉に面接官は、「私たちが必要としているのは、まさにそれです。その柔軟さを、是非、発揮してください」。
オープニングスタッフの平均年齢は20歳。スタッフチームを包みまとめる要の役割を期待していると、そう言われて、その場で採用が決定しました。
・60代の彼女がパン屋に売ったもの・彼女のスキル
食事会の席で彼女は、本当に晴れやかでした。
「60代の私がやれるって胸張って言えることは、これしかないからね」と「どれも一緒のチームで学んだこと、教えられたこと、感謝しています」と。
彼女が就活で自分の売りとしたもの。。。
それは、年齢・時間を積み重ねなければ勝ち得ない、何百人、何千人というお客様に接してきた「実績と自信」だったんだと思います。
どんなに優秀でも、20歳には20年の経験、30歳には30年の経験で、どれだけ自信をもっていても、裏付けられる実績は過ごしてきた時間分しかないからです。
そして、今更ながらに気が付いたのは、彼女が武器としたスキルとは、いつもチームに繰り返し言ってきたこと。現場経験でしか培えない、スキルチェックでは見せることのできない能力でした。
云わば、20代、30代が、おろしたてのピカピカの包丁だとしたら、彼女は、何年も使い込まれて、たくさんの食材を切って研がれて、ぴたっと吸い付くような切れ味になった包丁でした。
パン屋の採用担当者が見て取ったのは、彼女のその切れ味。
彼女の言葉から経験と人柄を見抜いて、年齢は関係なく、ミドルだから、シニアだからこそ活かせる輝きが光って見えたんだと、そう思います。
私が見えなくなっていたことは、
技術的なスキルや業務的な経験だけでない、自分が持っている能力の、本質的な人との違いはどこにあるかを見る視点、それと、その仕事に、期待感と責任感を持って取り組めるかどうかの大切さでした。
晴れやかに笑った彼女の顔を思い浮かべます。
笑顔のいい、人をほっこりさせる会話のできる彼女は、間違いなく新店舗のパン屋さんで活躍できる。たぶん、夏以降に仕事が復活しても、私の元には戻ってこない。
いや、きっと戻ってこないと思います。
でもそれでいいんだろなと、別にミドルでもシニアでも、次のステップに進めるときは、そんなチャンスが来たときは、臆さず進めばいい、フレフレ!ミドル!